滅ぼすな

詩59:11「彼らを殺してしまわないでください。私の民が、忘れることのないためです。御力によって、彼らを放浪させてください。彼らを打ち倒してください。主よ。私たちの盾よ」
この詩のタイトルには「サウルが人々を遣わし、彼らがその家の見張りをしたときに」とあります。このとき、ダビデはサウル王の前でいつものように竪琴を弾き、サウル王を慰めていました(1サム19:10)。ところがサウル王に主からの悪い霊がくだり、サウルは槍でダビデを殺そうと投げつけたのです(1サム19:11)。いのちからがら逃げたダビデの家をサウルの家来が包囲し、危機一髪のときにダビデの妻ミカルが機転を利かして窓からロープでダビデを逃がしました(1サム19:12)。この時の歌がこの歌です。これ以降、ダビデとミカルは離れ離れになり、サウルはミカルと別の男を結婚させてしまいます(1サム25:44)。ダビデが歌った歌の調べは「滅ぼすな」という変わったタイトルのもので、ダビデ自身も歌の中で「彼らを殺してしまわないでください」と訴えています。次第に悪化していくサウル王の態度になすすべもなく、ただ主に訴えることしかできなかったダビデは悔しい気持ちでいっぱいだったと思います。それでも「主が油注がれた方に手を下して、誰が無罪でおられよう(1サム26:9)」と、主が選ばれたサウルを最後まで攻撃することはありませんでした。ダビデは復讐する者ではなく、主に仕える者だったのです。