あなたの声なのか

1サム24:16「ダビデがこのようにサウルに語り終えたとき、サウルは、「これはあなたの声なのか。わが子ダビデよ」と言った。サウルは声をあげて泣いた」
サウルにも良心がまだ残っていたようです。サムエルはダビデに油を注ぎ(16:13)、民衆はダビデを王に次ぐ者だと言い(18:8)、息子ヨナタンダビデを擁護しています(20:32)。どう考えてもサウルにはダビデが憎らしくてしょうがないのです。そのダビデが自分の衣のすそを切れるほどに近づいたのに、サウルに危害を加えませんでした(4)。「自分が思っていたダビデと違う…」、そう考えたサウルは「これはあなたの声なのか」と問うのです。本当は、サウルが追いかけている相手はサウルを傷つけ、心をずたずたにして王位までも奪おうとしている極悪人であったはずです。あわよくばサウルを亡き者として自分が王になろうとしているとんでもない奴です。チャンスがあれば自分は殺される…そうなる前にダビデを殺してしまわなければ…サウルの中の妄想は止まる気配さえありません。そんなとき、サウルは殺される隙をダビデに与えてしまったのです。ダビデの正しい態度は曇ったサウルの心をきれいに吹き飛ばしたかのようでした。サウルが声を上げて泣いたのを読んだ瞬間、どんな人にも良心があり、神の義を目の当たりにしたとき心は目覚めるのだと思います。この出来事はほんの束の間のサウルのやすらぎだったようです。