アムノンとアブシャロム

2サム13:2「アムノンは、妹タマルのために、苦しんで、わずらうようになった。というのは、彼女が処女であって、アムノンには、彼女に何かするということはとてもできないと思われたからである」
英語では異母兄弟、あるいは異父兄弟のことを「half brother(ハーフブラザー)」と呼びます。アムノンとタマルは同じダビデを父とするハーフブラザー同士でした。聖書にはロトのことに始まり多くの近親相姦が描かれています(創19:31-35)。それでもタマルに恋したアムノンは最後まで思いを貫き通すべきでした。タマルと寝たあとに襲ったアムノンのタマルへの嫌悪感はあたかも娼婦と寝たかのようで、用が済んだら恋もへちまもないという男の身勝手な様子が書かれています(15)。一方実兄アブシャロムはタマルが汚されたことを知り、すぐには復讐せず機会をうかがっています。それはダビデを父とする王子ならではの苦悩であり、狡猾なアブシャロムは黙ることでタマルの復讐をしようと狙っていました。アムノンが長男であることも大きな弊害となっていたようで、通常なら王の後継者となるべき長男に手をかけるのはアブシャロムにとっても大きなリスクだったと思います。それでも頭に灰をかぶり、長服を裂き、泣きながら歩く妹を見て(19)、黙っている兄がいるでしょうか?アブシャロムの取った行為の善悪は別にして、個人的にはアブシャロムが妹を思う心意気に賛同せざる得ません。