2サムエル記11章 城壁の上からひき臼の上石を投げつけて

2サム11:21「エルベシェテの子アビメレクを打ち殺したのはだれであったか。ひとりの女が城壁の上からひき臼の上石を投げつけて、テベツで彼を殺したのではなかったか。なぜ、そんなに城壁に近づいたのか』と言われたら、『あなたの家来、ヘテ人ウリヤも死にました』と言いなさい」
聖書に何人かアビメレクという名前が登場しますが、ここれダビデが言っているのは士師記の中のエルバアル、すなわちギデオンの子アビメレクのことです(士9:1)。彼は自分の兄弟を70人を殺し、シェケムの王になろうとしました(士9:5)。アビメレクは3年間イスラエルを支配したと聖書には書かれています(士9:22)。アビメレクは戦い方を知っている強い武将でしたが、彼が死んだのはひとりの女の投げた引き臼の石によってでした(士9:53)。彼は自分は女に殺されたと人に言われたくなかったので、道具持ちに刺されて死にました(士9:54)。この逸話は以降、イスラエルの兵法にも取り入れられ、むやみに城壁に近づかず、距離を置いて戦うのが定石だったようです。ヨアブはイスラエルの将軍で軍師でもあったので、そのような初歩的なミスをするはずがありません。ヨアブがむやみに自分の部下を死なせることがなかったのは、彼の戦場での作戦が巧みであったことを匂わせます。しかし、ウリヤを死に追いやるためには、馬鹿げた戦法を使わざるを得なかったのです。ダビデもまた戦いには巧みであったので、ヨアブのとった行動が愚かな軍師が考えそうなことだと悟ったと思います。ヨアブが使者に命じたのはウリヤが死んだことを忘れずダビデに伝えることでした。