使徒22章 ローマ市民である者を

使22:25「彼らがむちを当てるためにパウロを縛ったとき、パウロはそばに立っている百人隊長に言った。「ローマ市民である者を、裁判にもかけずに、むち打ってよいのですか」
パウロがこういう言い方をしたのはこれで2回目です。最初はテアテラで占いの霊につかれた女奴隷から霊を追い出し、彼女の主人から訴えられ牢獄に入ったときです(16:16-18)。このときはすでにむち打たれた後でしたが、テアテラの長官が釈放しようとしたとき「ローマ人である私たちを、取り調べもせずに公衆の前でむち打ち、牢に入れてしまいました(16:37)」と訴えています。さらに、長官にみずから出向いてわびるように言い、長官はそのとおりにしました(16:37-38)。今回もパウロローマ市民だとわかると、取り調べようとした人たちはパウロから身を引いたとあります(30)。見た目はユダヤ人なのに、れっきとしたローマ市民であり、しかも生まれながらの市民だとなると(28)、扱いはかなり変わって来ます。どうやら、パウロが意図的に自分はローマ市民だとアピールしているようです。それは、不当な扱いを理由に上訴して、あわよくばローマ皇帝の前で発言する機会を得ようとする彼なりの作戦でした。他の人から見れば、むち打ちを回避でき、なわも解かれれば、無理に事を大きくせずとも、丸く収まった出来事です。しかし、パウロはこの一点突破に賭けたのです。後にアグリッパがフェストに「この人は、もしカイザルに上訴しなかったら、釈放されたであろうに(26:32)」と言わしめた行為です。すべてはローマ皇帝に対して、イエス・キリストを伝えるためです。