ルカ7章 あなたに言う、起きなさい

ルカ7:14「そして近寄って棺に手をかけられると、かついでいた人たちが立ち止まったので、「青年よ。あなたに言う、起きなさい」と言われた」
ナインとはナボル山のふもとにあり、ナザレから南東へ10キロほど下ったところに位置します。ナインの町の前にカペナウムで百人隊長のしもべをいやしていますから(1-10)、カペナウムからまっすぐ南下したことになります。ルカは「やもめとなった母親のひとり息子(12)」という書き方をしていますが、それは町の門で見かけただけではわからないことです。しかし、イエス様はそのことを瞬時に見抜いて「かわいそうに(13)」思われたのです。「かわいそうに思い」に使われているギリシャ語は「splagchnizomai(スプラグニズマイ)」で、新改訳では「かわいそう」と共通な訳を当てています。この単語は単に同情するよりも、もっと感情を伴った意味を含んでいます。はらわたから突き動かされるような思いがイエス様にあったようです。それは夫にも死なれ、唯一の家族であった息子が亡くなった母親の気持ちを、すぐに悟られたからです。普通に棺桶が担がれるのを見かけたなら、ひょっとしたら見過ごされたかも知れません。イエス様は母の心にある息子への愛をご覧になられたので「泣かなくてもよい(13)」と言われたのです。ルカの福音書の中では、この記事が最初に死人を甦らせたものとなっています。どうしても「ラザロ」のことが話題になりがちですが(ヨハ11章)、イエス様の愛はこのやもめの母にも注がれました。