ルツ1章 マラと呼んでください

ルツ1:20「ナオミは彼女たちに言った。「私をナオミと呼ばないで、マラと呼んでください。全能者が私をひどい苦しみに会わせたのですから」
「ナオミ」の意味は「喜び」ですが、「マラ」は「苦味」を意味します。ヘブル語の単語としてはルツ記だけに登場するものです。ナオミがモアブの地でいかに苦しんだかがわかります。モアブへの移住の判断はナオミの死んだ夫エリメレクのものでした(2)。約10年(4)も経ちナオミが戻ってきたとき、町中の女がナオミを覚えていたことで、同じベツレヘムに住んでいた者でも、その場に留まり飢饉を乗り越えた者たちもいたことがわかります。彼らの祖先ヤコブたちも飢饉をきっかけにエジプトに移り住みました(創46:6)。おそらく飢饉は思ったよりもひどかったのだろうと思われます。それは、ナオミの家族の男性が全員死んだことからもわかります。稼ぎ頭の男たちがいなくなったことで、ナオミ一家は存続の危機に陥りました。ナオミには二人の嫁たちを養うだけの力はありません。彼女たちに実家に帰して自分もベツレヘムに帰ろうと心を決めます(15)。ここでナオミとルツの間に信仰のギャップが生まれていることに気づきます。ナオミは神は自分から夫も息子も取り去られたと思い、自分は「喜び」ではなく「苦味」と名乗ろうとしています。一方、ルツはナオミの神には困難な状況でも、頼る者に手を差し伸べられる神だと信じたのです。