2サムエル14章 ヨアブは来ようとはしなかった

2サム14:29「それで、アブシャロムは、ヨアブを王のところに遣わそうとして、ヨアブのもとに人をやったが、彼は来ようとしなかった。アブシャロムはもう一度、人をやったが、それでもヨアブは来ようとはしなかった」
ヨアブの本音としてはアブシャロムの回復より、ダビデが息子と敵対することを回避したかったのだと思います。それはテコアの女の言葉の中にある「主に心を留め、血の復讐をする者が殺すことをくり返さず(11)」という部分に集約されています。アムノンがタマルを汚したことは、確かにダビデの怒りを買いました(13:21)。しかし、その後2年の間アムノンには何のおとがめもなかったのです(13:23)。アムノンに対する甘い態度は、アブシャロムにダビデの全息子たちの前での惨殺を決意させました(13:32)。アブシャロムはすぐに逃げ(13:34)、この段階でダビデが討伐隊を組み、アブシャロムを追えば「血の復讐」が繰り返すことになります。アブシャロムの子どもたちがダビデに復讐することになりかねません。ヨアブの思いは、この血の連鎖を断ち切ることにありました。しかし、アブシャロムはヨアブはもっと自分に好意的で、面倒を見てくれると勘違いしていました。ヨアブの血の連鎖を断ち切る作戦は、賢いテコア人の女の働きで完結しています。少なくともヨアブの思いの中ではそうです。ダビデがアブシャロムをエルサレムに帰したことは(23)、アブシャロムを討つ気はないという明確な意思表示です。ヨアブとアブシャロムは、両者ともに平行線のままだったのです。