ヨブ記13章 神と論じ合ってみたい

ヨブ13:3「だが、私は全能者に語りかけ、神と論じ合ってみたい」

ヨブ記が聖書の中で最も古い書簡だとされているのは、ヨブや友人たちの会話の中に「律法」ということばが出てこないからです。ヨブの時代には、まだモーセシナイ山十戒を受け取っていなかったと推測されます(出24:12)。それでも神の存在は多くの人が知っており、モーセの時代には異教の民であったナアマ人やテマン人もヨブと同じ神を信仰していました。旧約と呼ばれるゆえんとなったアブラハム契約(創15:4-6)をヨブが知っていたかどうかもわかりません。そのような時代背景の中、神が人を導き、正しいとされることを人が悟り、その道からそれないようにしていたのだと思われます。もし、モーセ以降の律法があったのなら、友人たちもその613ある律法に照らし合わせて論じ合うこともできたでしょう。少なくともヨブは十戒の戒めのどの項目にも反してはいませんでした。「神が私を殺しても、私は神を待ち望み、なおも私の道を神に主張しよう(15)」とさえ言ったヨブの信仰に揺らぎは見えません。人はヨブを訴えようとしますが、ヨブ自身は自らの潔白を主と直接語り合ってみたいと願っています。いったい、何が悪かったのか、自分のどこに神を裏切る行為があったのか、それに思い当たることのないヨブはいまも闇の中でもがいています。