損失を償うことができない

エス7:4「私も私の民族も、売られて、根絶やしにされ、殺害され、滅ぼされることになっています。私たちが男女の奴隷として売られるだけなら、私は黙っていたでしょうに。事実、その迫害者は王の損失を償うことができないのです」
エステルの発言は数少なく、王の前で気をつけて話していることがわかります。彼女はユダヤ人が殺され、奴隷として売られることだけを告げてもアハシュエロス王の判断をくつがえすことができないことを知っていました。ハマンは王を説得するときに銀1万タラントを王の金庫に納めると言って、ユダヤ人を滅ぼす命令に承認を得ました(3:9)。エステルが最後に言ったことばは、「王の損失を償いことはできない」というものでした。「償う」に相当するヘブル語は「shavah(シャバア)」で「納得させる」とか「満足させる」という意味があります。ユダヤ人を失うだけでなく王の政権のダメージになるならば、アハシュエロスも考えなければなりません。エステルの言った「王の損失を償いことはできない」は効果的に王の心を動かしたと思います。アハシュエロスは他民族であっても、ペルシャが栄えるためなら積極的に登用し寛容な王だったといえます。それゆえ、モルデカイに指輪を与え王に次ぐ位を与えたのでした。王の考え方さえも見抜き、言葉に十分に注意を払ったエステルの知恵がユダヤ人を救ったのです。