ルカ23章 われわれをおおってくれ

ルカ23:30「そのとき、人々は山に向かって、『われわれの上に倒れかかってくれ』と言い、丘に向かって、『われわれをおおってくれ』と言い始めます」
エス様はむち打たれ、歩くのもやっとの状態のため十字架を担ぐことさえ困難な状態でした(26)。このような刑場に向かうときでさえ、付き従ってくる女たちを気遣っています。「娘たち(28)」のギリシャ語は「thygater(スガテール)」が使われており、自分の娘(英語daughter)を指す言葉です。この女たちに「我が娘」「自分の子どもたち」と言っているので、もし文字通りなら、彼女たちが生きている間に起きることを言っているのだと思います。考えうるのは、AD66年から始まったユダヤ戦争が挙げられます。ユダヤ戦争のきっかけは、ヘロデ王の死後、ユダヤ地方がローマ直轄になったことにあります。ローマがユダヤ教を排除しようとしたことで反乱が起き、AD70年にエルサレム神殿が破壊されます。平和だったエルサレムは一転して火の海となり、人々は散り散りに逃げ惑ったことが記録されています。ユダヤの抵抗が激しかったので、ローマ軍もエルサレム破壊を余儀なくされました。この様子をイエス様はホセアのことばから引用されました(ホセ10:8)。これから十字架に掛かろうとしているのに、最後まで聖書からのことばを引用して女たちに教えようとしていたのです。それは、イエス様を悲しむことよりももっと悲しい出来事が、自分や自分の子どもたちの時代に起きるというものでした。