ヨブ記10章 私をちりに帰そうとされるのですか

ヨブ10:9「思い出してください。あなたは私を粘土で造られました。あなたは、私をちりに帰そうとされるのですか」

ヨブには羊七千頭、らくだ三千頭、牛五百くびき、雌ろば五百頭があり、多くのしもべを持っていました(1:3)。さらに7人の息子と3人の娘に恵まれており(1:2)、東の世界では一番の富豪だったとあります(1:3)。ヨブが試練を受けてからこれまでに、ヨブの口から羊やらくだ、牛やろばを惜しむ発言はありませんでした。多くの財産を持つ人間ならば、それを失ったとき豪華絢爛な宝飾、屋敷、自分が味わった贅沢の数々を思い起こし、懐かしみ、悔しがるでしょう。しかし、ヨブの心には何かを失ったことよりも、神との信頼関係が崩れようとしていることが気がかりなのです。ヨブ自身がなぜ生まれてきたかを怪しみ、母の胎から出てきたことを残念に思うようになっています(18-19)。それはあたかも冤罪を問われた人のように無実潔白を訴えても認めてもらえないかのようです。友人たちはそれでもヨブの中に何か間違いがないかを探ろうとしています。ここにヨブ記の最大のテーマがあります。ヨブ記を読む者は、最初に神とサタンとのやりとりを知って読んでいます。もし、読む側にこのやりとりが欠落していたなら、私たちもヨブに何か隠された落ち度があったのかもと疑ってしまいます。はるばるやってきた友人たちはちょうどこの問題に直面し、ヨブに語りかけているのです。