たとえ話の元ネタ

ルカ19:14「しかし、その国民たちは、彼を憎んでいたので、あとから使いをやり、『この人に、私たちの王にはなってもらいたくありません。』と言った」
エス様が生まれたときのユダヤ王は初代ヘロデ王で、2歳以下の男の子を殺した残忍な男でした(マタ2:16)。そのあと、短命ですがアケラオという息子が領主になったことがあります(マタ2:22)。アケラオはローマまで、ユダヤ統治の許可をもらいに行った記録が残っています。同時にそのとき、民衆からの嘆願書がローマに出され、アケラオを王としないように運動がなされたのです。イエス様のこの話は、まるでこのアケラオのことをなぞるように話されています。しかし話の後半、つまりミナのたとえ話に関しては、イエス様オリジナルの内容です。よくマタイのタレントの話と比較されますが(マタ25章)、ルカのほうがアケラオの話を織り込んでおり、より聞いている人にとって馴染み深いものになっています。結果として、ユダヤの民衆運動は実を結び、ヘロデ一族による統治ではなく、ローマの直轄領として総督を派遣し治めるようになりました。ユダヤ王の称号はあくまで、ユダヤ人の慣習として残りましたが、ユダヤの社会でもっとも力を持っていたのは大祭司でした。祭司、王、総督…3人の統治者のうち最も力をもっていたのが総督です。